日本に一番近いラテン・アメリカの国はメキシコだと言うことには誰も異論はないであろう。しかし、私は、フィリピンこそ本当は最も日本に近いラテン系の国ではないかと思っている。なぜならば、800年もスペインの統治下にあって、今でも、スペイン語での人の名前や、町や通りの名称がたくさん残っているし、通貨単位もスペインのペソのままである(注)。
私はフィリピンを全く知らないが、テレビなどで見るフィリピン人の体型や気質などにラテン(スペイン)の血が今でも流れているような気がする。まあ、それはとにかくとして、ラテン・アメリカと言えば中南米諸国であり地球の裏側である。
ではいよいよ「ラテン・アメリカの民芸品の旅」を始めよう。ご案内する国は13か国で、メキシコから出発して、まずメキシコ湾を東へ飛び、カリブ海の真珠と言われるキューバ(今はすっかりその輝きを失っているが)を巡り、再び中米はグアテマラに戻り、一路南下して南米大陸のベネズエに入り、そこから時計回りに広大な大陸を回って、最後はコロンビアを終点とする旅である。
集めた民芸品の数は、国によって行ったときの手荷物の量や日数の関係で、数が少ない国や、逆にたくさん集められた国がある。自分がいたアルゼンチンは元よりであるが、ペルーやチリ、ボリビアなどは比較的多い方である。反対にキューバ、グアテマラ、ベネスエラ、エクアドル、コロンビアなどは、ほんの数点しか集められなかった。これらの国については、紹介する品物も寂しいものであることを、予めお断りしておかなくてはならない。
お話は、収集した民芸品の写真を紹介して、それに関連する事柄を説明し、観光ポイントなどに触れながら進めていくが、どうしても横道にそれがちである。なるべく本題から外れないようにと思っているが、多少の道草はご容赦願いたい。
この「民芸品の旅」は、2003年に初版が完成し、2003年春にアップロードした。そして、その後は世界の状況も随分と変わった。民芸品のありようが、政治・経済・軍事問題などに影響を受ける事などあり得るはずはないが、文章の端々にはその国の様子に触れている部分もある。そうした理由から2009年に全面的見直しを行い、そのご暫くは手を入れなかったが、その後�10年余り経ち、あまりにかけ離れた状態の国もあり、初版から20年を経過したのを期に、2023年1月に全面的改訂を行った。ただし、この文の執筆思想に基づき、政治・経済・軍事に関することにはできる限り触れないことにしている。
(注)ペソと言う言葉は、重さ、秤、重要性などの意味で、メキシコ、キューバ、ドミニカ、アルゼンチン、ウルグアイ、チリ、コロンビアなどの通貨単位になっている。**
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