【地球の裏側を走る =アルゼンチンの車と人と街並み=

まえがき
 
私は1982年始めから1985年末まで南米アルゼンチンで駐在生活を送っていた。この時代は後に、いわゆる”ラテン・アメリカの失われた80年代”といわれた、経済的にも(ハイパーインフレの襲来)、社会的にも(国有企業の民営化などによる失業者の増大)、政治的にも(軍事政権の終焉)、多くの国が混乱を極めた時代であった。しかし幸い私の仕事はこうした環境に左右されるものではなかったので、無事に過ごす事ができた。この間に、仕事は元より家族と一緒の観光などで、国内だけでなく、リミトロッフェ(陸続きの隣国)のウルグアイ、チリ、パラグアイなどへ自動車で出かけた。4年間の走行距離は5万キロを遥かに越えた。この物語りは、その間に見たり、聞いたり、体験したりしたことを纏めたノンフィクションの記録である。
 執筆したのは帰国後の1988年で、ある雑誌社の懸賞作品コンクールに応募し、全120編の中から最終選考の6編に残ったがが、残念ながら入選できなかった。原稿はその後本棚に埃を被っていたが、このホームページを開いたのを機に、広く公開しようと思い立った。しかし、発展の早い自動車社会の様子はアルゼンチンとて例外ではなく、2000年に久し振りに訪れた時に見た車社会は、12年前とは格段の違いがあった。そこで、本文は執筆した当時のままとし、その内容を自分の目で確かめたものに修正し、さらに現状に合わせるため、ブエノスアイレスの友人に校閲を依頼した。その結果、変わってきた部分を赤字にて附記し、現在(2007〜10年頃) の現状とできるだけ乖離しないようにした。アルゼンチンの車社会の変遷や、街並などがおわかり頂ければ幸いである。

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