ラテン・アメリカ人の人間生態学 No.16 【猪突猛進の若さだけでは、全ての問題の解決と前進は不可能であると知るべし】 当地で、最大発行部数を誇っている日刊紙たクラリンに、かって 「日本の奥様階級に年金シンドローム」 と言う記事が1ページ全部に掲載された。概要は、働き蜂だった夫が年金を受け取るようになり、自宅で過ごすことになった時、一人で過ごす習慣を身に付けた奥様族にとって、厄介極まりないのが、ごろごろしている夫である。退職金の半分、年金の半分を受け取り、"離婚" すなはち "はい、さよなら" と言う現象が起きている、と報道されたことがある。 25羽の雌鶏と1羽の雄鶏を飼っている農夫は、雌鶏が毎日産む新鮮な卵、それにヒヨコが孵る卵を売る収入で、将来は安定した生活ができるという期待で楽しい毎日を過ごしていた。しかし、雄鶏が既に相当歳をとってきたことから、若い雄鶏に替えることにして、知り合いの養鶏場から元気な雄鶏を買ってきた。 この元気な雄鶏が小屋に入れられた途端、25羽の雌達、身なりを整え、化粧を直してモーションを掛け始めた。それを見た老雌鶏の落胆ぶりは可哀想なくらいであった。気持ちを取り直して、若い雄鶏の前ヘ行き、 「よく来たね〜、心から歓迎しますぞ。アンタのような若い、元気な者と会えて嬉しい限りだよ。この年寄りに代わって25羽との愛情交換に意欲満々とみたが?」 「その通りだよ、老いぼれさん。何か文句がありますかね」。 「ノー、何も問題は無いんじゃがね、ただ彼女達とのこれまでのこともあるんで、引き際を気持ちよくしたいんじゃよ。栄誉ある引退を希望しておるんだけなんだがね」。 「なにをすればよいのか?、何を希望するんだよ」。 「いや〜、もうわしには喧嘩をする元気はない。ただ一つだけ頼みたいんじゃがな、、、この鶏小屋を3周してどちらが速いか、と言う競争をしたいんじゃよ」。 「そんなこと簡単さ、よっし受けた!」。と若鶏は威勢良く答えた。これなら余計に雌鶏達にいい格好して見せられると内心ではホクホク。 「この競争でな、一つだけ頼みたいことがあるんだ。もう歳でもあるし、少しハンディを貰いたいんじゃよ。鳥小屋の半分先からスタートさせてもらいたいのじゃ」。 「お〜 全然問題ない」。
そして競争が始まった。老雌鶏が小屋の2周目にかかったとき、 まさに若い鶏が追い付こうとする寸前、突然パーンという散弾銃 の轟音が響き、紅い血の飛沫が飛び、羽がひらひらと舞った。 そして若い雄鶏が地べたに倒れた。 「あの養鶏屋め!! 1週間に3羽もの”おかま雄鶏”なんか売り付けやがって」、 怒り顔の飼い主の農夫の手には、まだ白い煙が立つ散弾銃が握られていた。 教訓: 猪突猛進の若さだけでは全てを解決できないのが人生である。深慮遠謀が出来るのは経験豊かであることを知るべきである。 |