ラテン・アメリカ人の人間生態学  No.17
  
【夫婦であっても互いの秘密は尊重すべし

 結婚30周年を迎えた1組の夫婦、ネストールさんとクリスティーナさんが、レストランで豪華な料理を楽しんでいた、、
 ほんおりと頬を紅くした妻に向かって、突然夫が真剣な顔で、、、、

  
「クリスティ、今日で30年の夫婦生活なんだけど、一つ聞きたいことがあるんだ、、、」
  
「何よ、真剣な顔をして、どうしたの?」
  
「怒らないで欲しいんだよ、二人の愛は絶対に変わらないんだから」
 
 「勿論よ、私達は夫婦なんだから」
  
「ただ一つだけ聞きたいというのは、30年の間、君は不倫をするチャンスがあったかどうかということなんだ、、、」
 クリスティーナはワイン・グラスをテーブルに置いて、真剣な顔の夫を見つめ、、
  
「なんでそんなことを聞くの? どうして今頃、そんなことを聞くの?」
 ネストールは一瞬黙り込んで、、、、 そして言った。
  
「いやーー、本当は聞いてはいけないんだろうが、、だけど知りたいんだ。決してその、、、頼むよ、、、」

 クリスティーナは夫の真剣な眼差しにうろたえながら、、、
  
「分かったわ、そう、、 この30年の間に、、3回、、3回だけ、、、貴方に悪いことをしたと思っているわ!」
  
「えっ! 3回も、しかし過去のことと割り切るよ、、だけどその3回はどんな理由なの? 誰とだったんだろうなーー?」
  
「覚えてない?、貴方が35歳の時、独立して会社を設立しようとしても何処の銀行もお金を貸してくれなかったことを。
  でも覚えているでしょ。あの日の夜、銀行の頭取から電話があって、何も聞かずに貴方の必要な金を貸してくれたのを」


  
「おー、そうだったのかクリスティ、君が私のために、なんと申し訳ないことを! 決して恨まないよ、それで、2回目は?」
  
「そう、思い出すでしょ、貴方が心臓病で倒れて緊急手術が必要なのに、何処の病院も受け付けてくれず、、、
  ゴメス先生だけが、 そうなの、ゴメス先生が手術してくれたのよ!」
シーリー
次ページへ 扉へ戻る

  
「ええっ、、 そうだったのか! 君が私の命を救ってくれたことになるな! 
それで、最後の3回目は??」

  
「数年前だったかしら、、私は反対したのに、貴方がゴルフ・クラブの理事長になりたいと立候補したのは。
  覚えている??、、、貴方が理事長に当選するためには25人もの理事の票が不足していたのを!!」

教訓:愛し合う夫婦であっても、お互いの秘密は明かさないことが信頼の絆をより強くするのである。お互いを尊重し合うことが大事で、過去完了形の出来事を現在進行形にすることは未来を危うくさせることもある。